アメリカでは、2018年になって遺伝子系図学が驚くべき応用方法で未解決事件が次々と解決しているのをご存知ですか?
実はこの捜査方法は、FBIの捜査官でもなければ法医学の専門家でもない、独学で知識を得て、趣味や好奇心で活動している人々…遺伝子系譜学者と呼ばれる一般市民・アマチュアの遺伝子研究家たちが思いついた手法なのです。
目次
なぜアメリカでは遺伝子検査が人気?
なぜアメリカでは遺伝子検査が人気なのでしょうか?
それは移民が多いアメリカでは、自分のルーツへの関心が高く、自分のルーツを知る意識がとても強いそうです。異人種間の結婚が増えて、養子縁組が多いため、実親を探す人も少なくないのです。
そもそもアメリカには、日本にあるような戸籍制度がありません。そのため、独自に記録をつけていなければ、自分の先祖を簡単には確定できないのです。
実際は、ざっくりした祖先を知っていたとしても、3代、4代前の先祖が誰だったのか、親戚がどの程度いるのかといったことを正確につかんでいる人はあまりいないのだそう。
このような事情から、全米でDNA鑑定による家系図作成を手掛ける民間のDTC(Direct-to-Consumer)遺伝子検査サービスが普及し利用者は急増しているのです。
今やアメリカでは遺伝子から家系を調査することが趣味の一環として身近にあるものなのです。
未解決事件(コールドケース)の犯人を遺伝子検査サービスで逮捕!
ゴールデン・ステート・キラー事件
遺伝子検査サービスを使って未解決事件(コールドケース)の犯人を逮捕できた事件の中で一番最初に解決したのが、アメリカ中を震え上がらせたカリフォルニア州の
『ゴールデン・ステート・キラー』と呼ばれた
容疑者ジョセフ・ジェイムズ・ディアンジェロ(Joseph James DeAngelo)
1970~80年代にアメリカ・カリフォルニア州でおきた連続殺人・強姦・強盗事件があり、40年間未解決だった事件です。1970~80年代にアメリカ・カリフォルニア州でおきた連続殺人・強姦・強盗事件があり、40年間未解決だった事件です。
遺伝子検査サービスを使った解決の糸口は、ディアンジェロ容疑者のひいひいひいお爺さんお婆さんが同じ人の遺伝子データから足がついたというのです。
年代的に考えると1800年代前半に生存していた人ということらしいのですが…
44年間逃げ続け、迷宮入り一歩手前のところ、ディアンジェロ容疑者が家の外に捨てた物品からDNAを採取し、犯人のDNAとの完全な一致を確認して逮捕。
ゴールデン・ステート・キラー事件は犯罪捜査の中でも特に重大で凶悪な事件が解決できたのです!
ジョン・D・ミラー(John D. Miller)
1988年にインディアナ州で8歳の女児を強姦殺害した容疑でジョン・D・ミラーを30年後の2018年7月に逮捕。
DNAデータベースを利用した捜査では捜査開始から数時間で犯人の親戚の存在を確認できたのです。
警察の捜査の結果、ミラーが破棄したごみから入手した遺伝子が事件の犯人のものと一致したことから逮捕となりました。
このような未解決事件が上記2件を含む33件の事件が解決に至っているのです。
そして未解決事件(コールドケース)を解決した方法が、遺伝子系図(家系図)によって長期間費やされた時間が、短期間で解明されるようになったのです!
遺伝子サービス会社
GEDmatch
最大級の遺伝子情報データベース。サービス利用にはアカウント登録と遺伝子検査サービスで手に入れた自分の遺伝子情報ファイルが必要。
日系人やアジア人も多数登録しているため、日本人であれば共通祖先を持つ人が必ず数十人以上見つかるそうです。
GEDマッチは、登録件数が増加し続けているオープンデータベースです。
Family Tree DNA
アメリカの最大手遺伝子検査サービス会社です。
こちらのFamily Finderで自分の常染色体遺伝子情報ファイルを入手することが可能です。
日本人の利用者数が多いこと、安価であること、データベースの規模が最大です。
他にも遺伝子検査サービス会社は、アンセストリー・ドットコム(Ancestry.com)や23アンドミー(23andMe)などもあります。
遺伝子系図学者シシ・ムーアが家系図で99%解決⁈ その解決方法とは?
遺伝子系図学者シシ・ムーア(CeCe・Moore)さんとは?
シシ・ムーアさんはFacebookの遺伝子家系調査グループリーダーの遺伝子系譜学者です。
なぜ遺伝子サービスに興味を持ったのかというと、ムーアさんの家族に養子として迎えられた義理の弟John Huffer(ジョン・ハッファ)ーさんが遺伝子検査サービス23andmeで遺伝子検査をしたところ、なんと独立宣言を起草したアメリカ合衆国第三代大統領、トマス・ジェファーソンの直系子孫だったことが判明したのです!
産みの親の歴史を知らなかった弟が自らの出自を知り、思いもよらないアイデンティティ(自分が何者なのか)を構築する過程を見て触発され、家系図の調査を独学で知識を得て、趣味や好奇心で活動するようになりました。
2017年、ムーアさんは、あまりしられていない事実に気がついたのです。
それは、化学捜査を専門にする企業パラボン・ナノラブズ(Parabon Nanolabs)(DNA分析)のDNAプロフィールもGEDマッチに入力できるということに気づきました。
このデータベースを使えば殺人事件を解明できるとムーアさんは思っていました。
ですが、個人のプロフィールを使用することは、アップロードされた数千、もしかしたら数万のDNAプロフィールに対する責任があったので、手が出せなかったのです。
しかし、なんと2018年4月、カリフォルニア州警察がゴールデン・ステート・キラーの容疑者を逮捕したと発表がありました!
2週間後には、科学捜査を専門にする企業パラボン・ナノラブズ(Parabon Nanolabs)は「遺伝子系図学」部門を創設し、ムーアさんを責任者に抜擢したのでした。
捜査方法とは?
遺留物から犯人のDNAを入手する
事件現場に残された犯人の体液、毛髪、皮膚片から犯人のDNA情報を抽出・特定します。
遺伝子データベースから犯人と一致するDNAを探す
遺伝子データベースのGEDmatchに犯人のDNAを登録し、遺伝子を共有する個人を特定します。
犯人と同じDNAを持つ人(マッチ)がどの程度の関係なのか推測する。両親とその子どもはDNAの50パーセントを共有し、従兄弟同士なら12.5パーセントを共有するなど。
マッチした個人の遺伝的家系図を作成し人間を特定する
公的機関に保存されている資料から、犯人と遺伝子が一致した個人の家系図を作成する。
遺伝子系譜学者、分子生物学者のアドバイスを参考に家系図上のどの人物が犯人のDNAを共有しているか、遺伝的に近いか遠いかを調査し、犯人の候補を絞る。
アメリカでは警察が被疑者や、被疑者の親族のDNAを警察が本人の承諾無しに採取することが可能です。
この遺伝子捜査は犯罪現場検証もなく、ニュースペーパー・ドットコム(newspapers.com)やクラスメイト・ドットコム(Classmates.com)、学校の卒業アルバム、フェイスブック、国勢調査などのサイトを見比べているのです。
最終的に容疑者を特定するときは消去法を使います。
遠い親戚どうしの結婚といったDNAに反映される家系的な出来事も、対象者を大きく絞り込みます。
容疑者の所有物や触れたものから遺伝子を摂取し、犯人との遺伝子の一致を確認した上で逮捕となります。
未解決事件(コールドケース)の犯人を遺伝子検査サービスで逮捕!遺伝子系図学者シシ・ムーアが家系図で99%解決⁈解決方法とは? まとめ
アメリカでは2018年にかけて迷宮入り確実と言われた未解決事件がGEDマッチを使用し逮捕遺伝子系図からの情報で半年のうちに14件も解決しました。
未解決事件の犯人特定で捜査チームが得たノウハウは強力な犯罪抑止力になると考えられます。
1968~1974年のカリフォルニアで起きた連続殺人事件 ゾディアック・キラー(Zodiac Killer)や、1996年のコロラド州でのジョンベネ殺害事件(JonBenet Ramsey mysteries)を解決できるのではないかと言われています。
ほぼ未解決事件を解決できる技術ができたと言っても過言ではない、革新的な操作方法となりました。
ただDNAプロフィール・データベースの登録者数が増えるにつれ、登録者の人々が匿名であり続けることは難しくなっていて、自分のDNAが完全に自分だけのものではなくなってきます。
そのようなプライバシーに関する部分を把握したうえで、遺伝子検査サービスにトライするかどうかはあなた次第です。
ですが、未解決事件が99%解決できるなんて、本当にすごいことです。どんな極悪人ももう逃げることができなくなりますね。これを機に犯罪が少なることを切に願います。
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